GICS(世界産業分類基準)と投資セクターについてのメモ

資産運用
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今日は、GICS(世界産業分類基準)と、その活用の仕方について考えていきたいと思います。

この記事のポイントは以下の通りです。

  • GICSは世界中の株式を11の投資セクターに分類する手法である。
  • 投資セクターを把握することで、資産を分散させ、大きな下落に備えることが出来る。
  • また、景気サイクルに合ったセクターに投資することで、リターンの向上に役立つ。

それでは本文に移ります。

GICS(世界産業分類基準)について

GICS(世界産業分類基準)は、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスとMSCIが1999年に共同開発した、先進国及び開発途上国を含む世界中の企業を一貫して分類するように設計された分類基準です。

2023年4月現在、11のセクター、25の産業グループ、74の産業、及び163の産業サブグループに分類されていて、産業構造の変化等に伴って定期的に見直されています。

引用元:https://www.spglobal.com/spdji/jp/landing/topic/gics/

セクターの一覧と分類例

2023年4月現在での11セクターの一覧は以下の通りです。

コード分類名(日本語)分類名(英語)代表的な企業
10エネルギーEnergyシェブロン、エクソンモービル
15素材Materialsアムコール、フリーポート・マクモラン
20資本財・サービスIndustrialsアメリカン航空、3M
25一般消費財・サービスConsumer Discretionaryアマゾン、フォード
30生活必需品Consumer Staplesコカ・コーラ、P&G
35ヘルスケアHealth Careファイザー、アムジェン
40金融Financialsバンク・オブ・アメリカ、JPモルガン
45情報技術Information Technologyアップル、インテル
50コミュニケーション・サービスCommunication Serviceアルファベット、AT&T
55公益事業Utilitiesネクステラ・エナジー、エクセロン
60不動産Real Estateキムコ・リアルティ、VICIプロパティーズ

さらに、例えばアマゾンであれば、以下のように更に細かく分類することが出来ます。

分類レベルコード分類名
セクター25一般消費財・サービス
産業グループ2550一般消費財・サービス 流通・小売り
産業255030大規模小売り
産業サブグループ25503030大規模小売り

ただ正直、個人投資家レベルであればセクター以上に細かく分類を考える必要はないと思います。

一般的には数十銘柄を同時に保有することは無く、11分類出来れば十分ですし、産業グループ以下は各投資情報サイト(BloombergやYahoo!)で食い違っているケースもあるからです。

GICS(世界産業分類基準)の使い方

GICSの提供するセクターの考え方は、主に以下の2つの観点から役立ちます。

投資分散効果

投資の格言に「一つのカゴに卵を盛るな」という言葉がありますが、その「カゴ」を分けるのにGICSは重宝されます。

銘柄を分割しているつもりでも、例えばあるセクターに集中して投資をしていると、なんらかの事件や環境変化でそのセクター自体が不調となった場合、大きな損失を被ることになります。

そこで、銘柄選定にあたって、ある程度セクターを分散することが資産を保護することに役立つというわけです。

ちなみに、S&P500の本記事執筆時点の各セクターの割合は以下画像のようになっており、一定の分散が効いているとはいえ、指数の性質上、時価総額の大きい情報技術セクターの割合が大きな割合を占めています。

https://www.spglobal.com/spdji/en/indices/equity/sp-500/#dataより引用

景気サイクルへの適合

もう一つ、セクターを把握しておくメリットとして、景気サイクルの波に乗った投資を行うことが可能になるという点があります。

景気サイクルには大きく分けて「好況期」、「後退期」、「不況期」、「回復期」の4つのステージがあり、それぞれの金融政策の状況と、買われやすいセクターは下記の表の通りと言われています。

好況期後退期不況期回復期
金融政策利上げ中立利下げ中立
短期金利上昇高止まり低下低位安定
インフレ率上昇高止まり低下低位安定
買われやすいセクター素材、資本財・サービス、一般消費財・サービスエネルギー公益事業、生活必需品、ヘルスケア、コミュニケーションサービス情報技術、金融不動産

本記事を執筆している時点では、米国をはじめ各国の利上げ(=金融引き締め)も終盤に迫っている状態であり、実態の景気悪化の懸念も大きくなっていますので、上記の表でいう後退期と不況期の狭間にいるような状態と言えます。

このような環境では、人々が消費を減らしづらく、従って景気の影響を受けづらい生活必需品や公益事業といったセクターが比較的買われやすい局面であり、そのような背景からこれらのセクターは「ディフェンシブ」とも呼ばれます。

このように、景気の局面に応じたセクターにまるで波乗りのように飛び移ることで、利益を上乗せすることが出来るかもしれません。(現実には中々難しいところもありますが…)

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